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「水道水にマイクロプラスチックが入っているらしい」
ニュースやSNSでそんな話を見かけて、コップの水をちょっと見つめて心配になってしまった。
そんな方も多いのではないでしょうか。
私は2007年から水をキレイにする仕事に携わってきました。
この記事では、不安をあおるでも軽く見るでもなく、いま分かっていることだけを正直にお伝えします。
先に、この記事の結論をまとめておきます。
・水道水にもマイクロプラスチックはわずかに含まれている(ただし量は少なめ)
・健康影響は「懸念する研究が増えてきた」段階で、因果関係はまだ確定していない
・不安だからとペットボトル水に切り替えるのは、むしろ逆効果になりうる
・減らしたいなら、中空糸膜タイプの浄水器が手軽で効果的。徹底するならRO(逆浸透膜)
それぞれ、根拠と一緒に見ていきましょう。
マイクロプラスチックとは、5mm以下の小さなプラスチックの粒のことです。
レジ袋やペットボトル、衣類の化学繊維などが、紫外線や波でボロボロに砕けてできます。
さらに小さい1μm(マイクロメートル=1mmの1000分の1)よりも小さい粒は「ナノプラスチック」と区別して呼ばれます。
これは髪の毛の太さの1000分の1以下という、目には絶対に見えないサイズです。
ポイントは、「マイクロ」より「ナノ」のほうが小さくて、体の中に入り込みやすいと考えられていること。
除去の話でも、このサイズの違いがカギになります。
結論から言うと、入ってはいるが、量は比較的少ないというのが現状です。
日本国内のある調査では、首都圏5か所の水道水から平均で1Lあたり4.1個のマイクロプラスチックが確認されています。
ただし注意したいのは、マイクロプラスチックの測り方には、まだ世界共通のルールがないということ。
調査によって数値に幅が出るので、「1Lに必ず4個」と断言できるものではありません。
あくまで「少量ながら検出される」という目安として受け止めてください。
なお日本の水道水は、法律で定められた51項目の水質基準をクリアして各家庭に届いています。
マイクロプラスチックはこの基準項目には今のところ含まれていません。
もともと水源の水を何段階もろ過・消毒しているため、含有量が少なめなのはこうした背景もあります。
ここがいちばん知りたいところですよね。正直にお伝えします。
現時点では「ハッキリと健康被害を起こす」とは証明されていません。
世界保健機関(WHO)も2019年の報告書で、いまの検出レベルでは健康リスクがあるとは結論づけられない、ただし研究は続ける必要がある、という立場を示しています。
一方で、ここ数年で気になる研究結果が相次いでいるのも事実です。
- 2024年(医学誌NEJM):首の血管(頸動脈)にたまったプラークからマイクロプラスチックが見つかった人は、心筋梗塞・脳卒中などのリスクが高い傾向があった、という研究が報告されました。
- 2025年(医学誌Nature Medicine):亡くなった方の脳・肝臓・腎臓を調べたところ、いずれからもマイクロプラスチックが検出され、特に脳での蓄積量が近年増えている傾向が示されました。
ただし、これらは「関連がありそう」という観察段階の研究です。
「マイクロプラスチックが直接病気を引き起こした」と証明されたわけではありません。
過度に怖がる必要はありませんが、軽視もできない。
プロとして言えるのは、ここまでです。
同じく水道水で気になる「PFAS(有機フッ素化合物)」については、こちらで詳しく解説しています。
「水道水が不安だから、飲み水はペットボトルにしている」
これ、よく聞きます。
でも、マイクロプラスチックに関しては逆効果になりかねません。
ある研究では、飲み水をペットボトル水だけにした場合と水道水だけにした場合。
1年間に体に入るマイクロプラスチックの量を比べています。
飲み水による 年間マイクロプラスチック摂取量の目安
※ ビクトリア大学ほかの研究(2019)による推計。水道水のおよそ20倍以上の差。
※ 2024年コロンビア大学の研究では、ペットボトル水1Lから平均約24万個(うち約9割はナノサイズ)の粒子を検出。
水道水のおよそ20倍以上という差です。
さらに2024年には、米コロンビア大学が新しい測定法を使い、ペットボトル水1Lに平均で約24万個(11万〜37万個)ものプラスチック粒子(約9割はナノサイズ)を検出したと報告しました。
その多くは、水を詰める工程で使うプラスチック製フィルターや、ボトル容器そのものから出ていると見られています。
つまり、「プラスチックの容器に長期間入った水」は、容器由来のプラスチック粒子を取り込みやすいというわけです。
水道水を避けてペットボトルに、というのは、マイクロプラスチック対策としては的外れになりやすいのです。
できます。
ただし、ろ材(フィルターの素材)のタイプによって除去できるサイズが違います。
ここを理解しておくことが大切です。
ざっくり言うと、こうです。

ろ材タイプ別 マイクロプラスチック除去能力
| ろ材タイプ | マイクロ (1μm以上) | ナノ (1μm未満) | ひとことメモ |
|---|---|---|---|
| 活性炭(単体) | △ | × | 塩素やカルキ臭の「吸着」が役割。こし取るのは苦手で過信は禁物。 |
| 中空糸膜・セラミック 孔径0.1μm前後 | ◯ | × | 網目より大きい粒を物理的に捕集。マイクロサイズに有効。 |
| 活性炭+中空糸膜 一般的な家庭用浄水器 | ◯ | × | 塩素もマイクロプラも対応。コスパと手軽さのバランス◎。 |
| RO(逆浸透膜)最強 孔径0.0001μm | ◎ | ◎ | ナノまで除去。ただし排水・ミネラル除去・水圧やコストの制約あり。 |
ポイントを補足します。
- 活性炭は、マイクロプラスチック除去が苦手。活性炭は塩素やカルキ臭、有機物を「吸着」する役割
- 中空糸膜(ちゅうくうしまく)は、孔(あな)の大きさが0.1μm前後の、極細のストローを束ねたようなフィルター。
この網目より大きいマイクロプラスチック(1μm以上)は、物理的に通り抜けられず捕まります。 - ナノサイズ(1μm未満)まで確実にとなると、孔が桁違いに小さいRO(逆浸透膜)の出番です。
>>RO水(逆浸透膜)とは?ブリタとの違いと作れる浄水器をプロが解説
「うちはどのタイプが合う?」という方は、まずこちらで全体像をつかむのがおすすめです。
手軽に始めたいなら、ポット型や蛇口直結型から検討してみてください。
「沸かせば減る」という話、聞いたことがあるかもしれません。これは条件つきで本当です。
2024年に中国の研究チームが、水を5分間沸騰させると、含まれるナノ・マイクロプラスチックを最大で80〜90%減らせる可能性があると報告しました。
>>水を沸かすだけで飲料水中のマイクロプラスチックを90%減らせるようになることが研究で判明、ただし軟水では効果が低いかも
加熱でカルシウム(湯垢のもと)が固まるときに、プラスチックの粒を包み込んで一緒に沈んでくれる、という仕組みです。
ただし、ここにプロとして外せない注意点があります。
煮沸(5分沸騰)による マイクロプラスチック除去の目安
| 水の硬度 | 効果の目安 | 解説 |
|---|---|---|
| 硬水 カルシウム多め | 最大80〜90%除去 | カルシウム(湯垢のもと)がプラ粒子を包み、一緒に沈殿する。 |
| 軟水 カルシウム少なめ | 効果は限定的 | 包み込むカルシウムが少なく、減りにくい。日本の水道水の多くは軟水のため過信は禁物。 |
※ 2024年の研究(中国・広州医科大学ほか)にもとづく。沸騰後は底にたまる沈殿物をフィルターでこしてから飲むのがおすすめ。
カギは水の硬度です。この方法はカルシウムが多い「硬水」でこそ効果が出ます。日本の水道水の多くは、カルシウムが少ない「軟水」なので、地域によっては効果が限定的です。お住まいの地域が軟水だと、思ったほど減らないこともあります。
また、沸騰後に底へ沈んだ沈殿物(白い粒)は、コーヒーフィルターなどでこしてから飲むひと手間が必要です。
手軽さで言えば、やはり浄水器のほうが確実ではあります。
ここまでをふまえて、ムリのない対策をまとめます。
- コスパ重視・まず試したい → ポット型や蛇口直結型(活性炭+中空糸膜)でマイクロサイズに対応
- 料理にもたっぷり使う・家族が多い → 蛇口直結型や据置型で日常使いをカバー
- ナノまで徹底したい・小さなお子さんがいる → RO(逆浸透膜)も選択肢に
特に、赤ちゃんのミルク用の水で迷っている方は、こちらもあわせてどうぞ。
水道水・浄水器・サーバーを正直に比較しています。
最後に、もう一度ポイントを整理します。
- 水道水にもマイクロプラスチックは含まれるが、量は少なめ
- 健康影響は懸念する研究は増えているが、因果はまだ未確定。怖がりすぎず、軽視しすぎず
- ペットボトル水への切り替えは逆効果になりうる
- 減らすなら中空糸膜タイプの浄水器が手軽。徹底するならRO
- 煮沸は硬水で有効・軟水では限定的。日本の多くは軟水な点に注意
「見えないから不安」なものこそ、正しく知れば落ち着いて選べます。
あなたの水生活が、少しでも安心できるものになればうれしいです。


