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水道水と聞いて「トリハロメタンって発がん性があるんでしょ?」と不安になった方もいるかもしれません。
ネットには煮沸をすすめる記事も多いですが、実はやり方を間違えると逆に増えてしまうやっかいな物質でもあります。
2007年から水をキレイにする仕事をしているロカキヤが、メーカーやサーバー会社の都合を抜きにして、トリハロメタンの「本当のところ」を整理しました。
難しい言葉はかみ砕いて説明しますので、肩の力を抜いて読んでください。
- 日本の水道水は 総トリハロメタン0.1mg/L以下 という厳しい基準で管理されていて、基準内の水ですぐに健康被害が出るものではありません。
- とはいえ含有量はゼロではないので、気になるなら減らす価値はあります。
- 煮沸は有効ですが、フタを開けて沸騰後さらに約10分が鉄則。短時間だとかえって濃度が上がります。
- 毎日のことを考えると、「総トリハロメタン」に対応した活性炭の浄水器がいちばんラクで現実的です。
ここから、順番にやさしく解説していきます。
トリハロメタンは、ひとことで言うと 水道水を消毒する過程でできてしまう副産物 です。
専門的には「消毒副生成物(しょうどくふくせいせいぶつ)」と呼びます。
仕組みはシンプルです。
川やダムの水には、落ち葉や枯れ草が分解された有機物(フミン質)が含まれています。
これを安全に飲めるようにするため、浄水場では塩素で消毒します。
このとき、塩素と有機物が反応してできるのがトリハロメタンです。
「トリハロメタン」は4種類の物質の総称で、検査ではまとめて 総トリハロメタン として扱われます。
- クロロホルム
- ブロモジクロロメタン
- ジブロモクロロメタン
- ブロモホルム
ちなみに、水温が上がると反応が進みやすくなるため、夏場は濃度が高くなりやすいという季節のクセもあります。
不安の元になっているのが発がん性の話です。
確かに、クロロホルムなどは国際がん研究機関(IARC)の分類で グループ2B(人に対して発がん性の可能性がある) に位置づけられています。
ただし、ここは冷静に見たいところ。
日本の基準は世界的に見てもかなり厳しく、たとえばクロロホルムは WHOガイドライン0.3mg/Lに対し、日本は0.06mg/L と5倍厳しい設定です。
基準内の水道水を飲んで直ちに体調を崩すようなものではありません。
下の表が、日本の水質基準で定められている値です。
| 物質 | 基準値 | ひとことメモ |
|---|---|---|
| 総トリハロメタン (4種の合計) | 0.1mg/L 以下 | 検査の代表値。まずはここを見ればOK |
| クロロホルム | 0.06mg/L 以下 | いちばん多く含まれる。WHO(0.3)より厳しい |
| ブロモジクロロメタン | 0.03mg/L 以下 | 4種でもっとも厳しい基準 |
| ジブロモクロロメタン | 0.1mg/L 以下 | 臭素を多く含むタイプ |
| ブロモホルム | 0.09mg/L 以下 | 含有量は比較的少なめ |
「1mg/L」は、水1リットルに対してわずか1000分の1グラムという、ごく微量です。
とはいえ、毎日口にする水だからこそ「できれば減らしたい」と考えるのは自然なこと。
次から、その方法を見ていきましょう。
家庭でトリハロメタンを減らす方法は、大きく分けて「煮沸」「浄水器」「浄水型サーバー」の3つです。
RO(逆浸透)という強力な方式もあります。それぞれの向き不向きを表にまとめました。
| 方法 | 手軽さ | トリハロメタン | おもな注意点 |
|---|---|---|---|
| 煮沸 (フタ開け5分) | △ ひと手間 | ◯ 除去できる | 短時間だと逆に増える/塩素も抜けるので早めに使う |
| 活性炭の浄水器 | ◎ 毎日ラク | ◯ 対応品なら | 「総トリハロメタン」表示の有無を確認/交換時期を守る |
| 浄水型サーバー | ◎ お湯もすぐ | ◯ 対応品なら | 本体価格と設置スペースが必要 |
| RO(逆浸透) | ◯ | ◎ ほぼ除去 | ミネラルも抜ける/価格・排水が出る点に注意 |
「いちばん簡単で確実なのはどれ?」と聞かれたら、私は活性炭の浄水器をおすすめします。
理由は、煮沸より手間がかからず、毎日続けやすいから。
続けられなければ意味がありませんよね。
ここがこの記事でいちばんお伝えしたいポイントです。
トリハロメタンは熱で気化する性質があるので煮沸で除去できます。ところが厄介なことに、沸騰する直前から直後にかけて、いったん濃度が上がるのです。研究によっては、加熱前の1.0〜3.6倍になったという報告もあります。
つまり「沸いたらすぐ火を止める」という一般的なやり方だと、もっとも濃度が高いタイミングの水を飲んでしまうことになりかねません。これでは逆効果です。
千葉県や東京都水道局の案内では、フタを開けたまま沸騰後さらに約10分続ければ、ほとんど除去できるとされています(昔は「10〜30分」とも言われましたが、これは古い試験データに基づくもので、今は5分程度で実用上十分という見方が一般的です)。
ありがちな失敗と、正しいやり方を並べました。
| ありがちな失敗 | どうなる? | 正しいやり方 |
|---|---|---|
| 沸いたらすぐ火を止める | もっとも濃度が高い瞬間の水に | 沸騰後もフタを開けて約5分続ける |
| フタを閉めたまま沸かす | 気化した成分が水に戻る | フタは開けたまま沸かす |
| 電気ケトルで沸かす | 沸くのが速く加熱時間が足りない | やかん・鍋でしっかり加熱 |
| 沸かした水を置きっぱなし | 塩素が抜け雑菌が増えやすい | 早めに使い切る/冷蔵保存 |
もうひとつ大事な注意点があります。煮沸すると消毒の役目をしている塩素も一緒に抜けてしまうため、煮沸後の水は雑菌が繁殖しやすくなります。
沸かした水は作り置きせず、できるだけ早めに使い切るのが安心です。
毎日これを続けるのは、正直なところ大変です。だからこそ、次の浄水器が現実的な選択肢になります。
浄水器の主役である活性炭は、表面の無数の小さな穴に汚れを吸い付ける性質があり、トリハロメタンもしっかり吸着してくれます。
毎日ボタンひとつで済むので、続けやすさは抜群です。
ただし、選ぶときにひとつだけ見落としてはいけないポイントがあります。
それは、品質表示の除去対象に 「総トリハロメタン」(または4物質の名前)が入っているかどうか。
「残留塩素(カルキ)除去」だけをうたった簡易タイプでは、トリハロメタンまでしっかり除去できるとは限りません。ここは必ずチェックしてください。
選ぶときのコツを、プロの視点で3つだけ。
- 「総トリハロメタン」が除去対象に明記されているか(JIS S 3201:2019に基づく試験で除去率80%が目安)
- カートリッジの交換時期を守ること。トリハロメタンは塩素より早く除去能力が落ちるため、交換寿命はここに合わせて設定されています。「まだ使えそう」で引っ張ると、肝心のトリハロメタンが素通りします
- 35℃以上のお湯を通さないこと。フィルターに吸着した成分がお湯で流れ出すおそれがあります
タイプ別の選び方は、それぞれの比較記事にまとめています。
なお、最近気になる方が増えている PFAS(有機フッ素化合物) も、活性炭で対応できる点はトリハロメタンと共通しています。両方まとめて対策したい方は、こちらもどうぞ。
体の小さい赤ちゃんのミルク作りでは、水の中身がより気になりますよね。
粉ミルクは一度沸騰させた70℃以上のお湯で溶かすのが基本(WHO/FAO/厚生労働省)なので、しっかり煮沸すればトリハロメタンの心配は実質的に解消できます。
ただし毎回フタを開けて5分…というのは、寝不足の育児中にはなかなかの負担。
浄水器や浄水型サーバーを組み合わせる方が多いのも納得です。詳しくはこちらにまとめました。
赤ちゃんのミルクの水はどれが正解?水道水・浄水器・サーバーを比較
最後に要点を整理します。
- 日本の水道水のトリハロメタンは厳しい基準内で管理されており、過度に怖がる必要はありません
- それでも減らしたいなら方法は3つ。煮沸・活性炭の浄水器・浄水型サーバー
- 煮沸はフタを開けて約10分が鉄則。短時間だと逆に増えるので要注意。塩素も抜けるので早めに使い切る
- 浄水器を選ぶなら、「総トリハロメタン」が除去対象に入っているかを必ず確認
「毎日続けられること」が、いちばんの除去方法です。
ご家庭のスタイルに合った方法で、安心しておいしい水と付き合っていきましょう。


