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「防災のために浄水器を用意したい」
「今使っている浄水器で断水は乗り切れるのか」
そう考えたことはありませんか。
結論から言うと、
いま多くのご家庭にある浄水器(ポット型・蛇口直結型・据え置き型)は、
断水時にはほぼ役に立ちません。
水処理の現場で19年、現役水処理技術者の立場から、忖度なく理由と対策をお伝えします。
断水したとき、いま自宅にある浄水器(ポット型・蛇口直結型・据え置き型)はほぼ役に立ちません。
理由はシンプル。
これらは「水道水」という安全な水をさらにきれいにする道具です。
水道が止まって水そのものが出てこない状況では機能できないからです。
防災の備えとして本当に必要なのは、川の水・雨水・お風呂の残り湯といった
「生水(きすい)」を安全な水に変えられる非常用・携帯浄水器です。
この記事では、その違いと選び方を水処理のプロの立場で忖度なく解説します。
理由はとてもシンプルです。
家庭用浄水器は「水道水」を対象にした道具だからです。
ポット型・蛇口直結型・据え置き型いずれも、
水道からすでに塩素消毒された安全な水が供給されていることが前提になっています。
フィルターの役割は、その水に残る塩素臭やカビ臭、トリハロメタンなどを取り除いて
「よりおいしく」することです。
水そのものを作り出す機能はありません。
つまり断水して蛇口から水が出なくなった時点で、
家庭用浄水器は文字どおり「水源」を失い、
動かしようがなくなります。
ここが、防災用品としての携帯浄水器・非常用浄水器と決定的に違う点です。
浄水器のカートリッジを交換しないとどうなる?本当のリスクをプロが解説
防災用途で使われる浄水器は、
川・池・雨水・お風呂の残り湯といった、
消毒されていない「生水(きすい)」を対象にしています。
ここが家庭用浄水器との一番の違いです。
生水には目に見えない病原性の細菌や原虫(クリプトスポリジウムなど)が含まれている可能性があります。
これらは水道水と違って塩素消毒がされていないため、
ろ過材そのものでしっかり捕まえる必要があります。
そのため非常用浄水器の多くは、孔径0.1ミクロン前後の中空糸膜(ちゅうくうしまく:ストローのように細い管状の繊維を束ねたろ過材)を採用し、細菌や原虫を物理的にこし取る構造になっています。
| 比較項目 | 家庭用浄水器 (ポット型・蛇口直結型など) | 非常用・携帯浄水器 |
|---|---|---|
| 対象になる水 | 水道水のみ | 川・雨水・池・お風呂の残り湯などの生水 |
| 主な目的 | 塩素臭・カビ臭・トリハロメタンなどの低減 | 細菌・原虫など病原性の高い微生物の除去 |
| 断水時に使えるか | 使えない(水源が止まるため) | 使える(自分で水源を確保する前提) |
| 主なろ過材 | 活性炭が中心 | 中空糸膜(孔径0.1ミクロン前後)+活性炭、機種によりRO逆浸透膜 |
| 停電時の使用 | ポット型・蛇口直結型は使用可(電源不要) | 手動タイプは使用可/電動タイプは要バッテリー |
防災グッズとして非常用浄水器を選ぶときは、次の3点を確認してください。
- 除去性能を確認する。細菌・原虫の除去率(99.9%以上が目安)が明記されているか、日本の水道水質基準に基づく試験結果があるかをチェック。数値の記載がない製品は避けましょう。
- 「除去できないもの」も確認する。多くの携帯浄水器は細菌・原虫には強い一方、農薬やヒ素などの化学物質、PFAS(有機フッ素化合物)は除去できない機種があります。過信は禁物です。
- 誰が使うかで選ぶ。災害時は体力も落ちがちです。力の弱い人や高齢者も使う可能性があるなら、ポンピングが不要な軽い力で使えるタイプを優先しましょう。
- ろ過できる総量を見る。「〇〇リットルまで」という寿命表示を確認し、家族の人数と避難生活の想定日数から逆算して選びます。
とくに「除去できないものがある」という点は、
販売サイトの謳い文句だけでは分かりにくいところ。
中空糸膜だけのシンプルな機種は、細菌や原虫の除去には強くても、
農薬・ヒ素などの化学物質や、水道水にも含まれるPFAS(有機フッ素化合物)までは除去できないことが多いです。
RO(逆浸透膜)方式や活性炭を組み合わせた機種は対応範囲が広がりますが、
その分サイズや価格も上がります。用途と予算のバランスで選びましょう。
PFASについては、家庭用浄水器側の対応状況を以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。
非常用浄水器には大きく分けて3つのタイプがあります。
それぞれ得意なシーンが異なるので、自分の生活スタイルに合わせて選びましょう。
| タイプ | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| ストロー型 | 専用パウチに水を入れ、ストローのように吸って浄水する。軽量・コンパクトで持ち出し袋に入れやすい | とにかく荷物を減らしたい人 |
| ボトル型 | ボトルに水を入れて押し出す、またはそのまま水筒として飲める。移し替えの手間が少ない | 力があまり強くない人・子どもがいる家庭 |
| ポンプ・据え置き型 | 手動ポンプや電動ポンプで大量にろ過。家族・近隣分をまとめて作れるが重く高価 | 避難所運営や大人数の備えを考えたい人 |
一人暮らしや身軽さを重視するなら軽量なストロー型、
家族で使うならボトル型、避難所運営や大人数を想定するなら据え置き型のポンプ式、
というのが基本的な考え方です。
非常用浄水器はあくまで「その場で水を作る」ための道具です。
防災の基本は、まず備蓄水を用意し、非常用浄水器はその不足分を補う位置づけで考えるのが安全です。
農林水産省は、飲料用・調理用として1人1日3リットル、最低3日分(9リットル)、
可能であれば1週間分の備蓄を推奨しています。
人命救助が最優先される災害直後の72時間を、支援に頼らず自力で乗り切るための目安です。
| 家族人数 | 3日分(最低ライン) | 7日分(推奨) |
|---|---|---|
| 1人 | 9L | 21L |
| 2人 | 18L | 42L |
| 3人 | 27L | 63L |
| 4人 | 36L | 84L |
なお、トイレや手洗いなどに使う生活用水は、1人1日10〜20リットルが目安とされています。
飲料水と生活用水は分けて考え、お風呂の残り湯を貯めておくといった工夫も有効です。
赤ちゃんのいるご家庭は、備蓄水の選び方にも注意が必要です。
硬度の高い水はミルク作りに向かないケースがあります。
「せっかく浄水器を導入したのに、防災には意味がなかったのか」とがっかりする必要はありません。
家庭用浄水器は、日常の水道水をよりおいしく、
より安心して飲むための道具として、引き続き価値があります。
トリハロメタンなど水道水由来の物質を減らせる点は、平時の健康対策として理にかなっています。

単純にお水が美味しくなるので価値があります。
そのうえで、防災という別の課題に対しては、非常用浄水器と備蓄水という「別の装備」を用意する。
これが水処理のプロとして最も忖度のない結論です。
「1台の浄水器に、日常と非常時の両方を任せる」という発想自体が、そもそも無理があります。
- 家庭用浄水器(ポット型・蛇口直結型・据え置き型)は水道水が前提。断水時は使えない
- 防災には、生水を安全な水に変えられる非常用・携帯浄水器が別途必要
- 非常用浄水器を選ぶときは「除去性能」「除去できないものの確認」「使う人に合った操作性」の3点を必ずチェック
- 浄水器だけに頼らず、1人1日3リットル×最低3日分の備蓄水も併用する
- 家庭用浄水器は日常の水質改善として引き続き活用し、防災用途は別に備える

